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前立腺がんは早期の発見と治療が大切です。原因、症状、検査、治療を知っておきましょう|メディカルアーカイブ

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HIFU(高密度焦点式超音波療法)とは

目次



強い超音波で癌細胞を焼き殺す


HIFUの説明を受ける患者 HIFU(ハイフ)は高密度焦点式超音波療法の略称であり、超音波を使った治療法です。超音波といえば超音波検査(エコー検査)が身近であり、健康診断や産婦人科などで多くの人が目にしています。

 HIFUは超音波を虫眼鏡で太陽光を1点に集めるように集中させ、高熱を起こして癌細胞を焼き殺す治療法です。実際、超音波を発するプローブの形状も虫眼鏡みたいな凹面をしています。

 超音波を照射する際は、プローブを直腸に挿入して行います。前立腺は直腸から5cm程度の距離に位置し、直腸と前立腺の間を遮るものがないことから、直腸に挿入したプローブから前立腺全体を照射することができます。プローブからの照射はコンピュータ制御された全自動であり、正確に癌組織を狙って照射することができます。

HIFUはピンポイント照射が可能


 超音波は一般的に人間の耳で聞こえない音域であり、超音波の強さはW/cm2で表されます。エコー検査で使用される超音波は0.093W/cm2ですが、HIFUの超音波は1300〜2000W/cm2にも達し、いかに強い超音波かがわかります。

 この非常に強い超音波を3×3×12mmという小さな範囲に絞って照射することで、照射部位の温度を80〜98℃の高熱にし、癌組織を焼き殺してしまいます。正常細胞もダメージを受ける温度ですが、癌細胞は正常細胞に比べて熱に弱いという特徴を活かしています。

 照射後は1秒以内に高温に達しますが、照射部位から5mm離れた場所は50℃程度であり、周辺の正常組織への影響を最小限に抑えることができます。


HIFUの治療時間は2時間ほど


 HIFUの適応は転移のない比較的早期の前立腺癌に限られます。また、前立腺の容積が40mL以下であること、術前のPSA値が20ng/mL以下であることが治療の基本となります。ただし、医療機関によっては前立腺の容積が40mLを上回っていても治療したり、ホルモン療法で小さくしてから治療する場合があります。

 HIFUを行うには、まず事前に前立腺の大きさや位置を詳細に検査し、超音波の照射範囲をコンピュータに設定する必要があります。患者は手術台に仰向けになり、肛門からプローブを挿入します。

 プローブはコンピュータ制御され、指定した場所に照射されるよう全自動で動作します。1箇所あたりの照射時間は3秒単位で調節され、治療は約2時間程度で終了となります。

 HIFUは照射する患部を高熱で焼くため、治療後は前立腺自体がやけどをしたような状態となります。前立腺は治療後しばらくの間むくんでしまうため、尿道が圧迫されて排尿障害が起こります。そのため、術後は尿道にカテーテルを挿入しますが、通常2〜3週間程度でとれます。

 HIFUは2泊3日、または3泊4日程度の入院で治療を行います。治療後6ヶ月間は毎月排尿状態とPSA値の検査を行い、6か月目に生検を行って癌細胞の有無を確認します。その後問題なければ徐々に検査頻度を減らしていきます。

HIFUは健康保険が適用されない


  HIFUはまだ新しい技術であるため、根治が期待できるのか長期的なデータが揃っていません。そのため、患者が50〜60代の若い年齢層で、かつ早期発見された場合はHIFUではなく前立腺全摘除術か放射線療法が選択されます。

 HIFUの最大のメリットは、体を切開することなく治療することができる点です。そのため、他の治療法では体力的に耐えられない高齢患者や、抗血液凝固薬を服用して切開できない患者にはHIFUによる治療が選択肢としてあげられます。

 また、他の治療法での再発事例にもHIFUでの治療は可能であり、理論上何回でも治療を行うことができます。HIFUの術中および術後での有害事象が少ないことや、退院後すぐに社会復帰できることもメリットとしてあげられます。ただし、HIFUには健康保険が適用されないため、100万円ほどの治療費が自己負担となります。



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